不登校とは?
不登校とは、年間30日以上学校を欠席している状態のことを言います。文部科学省が行った不登校児童生徒の実態調査(令和2年度)によると、最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけは、身体の不調(学校に行こうとすると腹痛が生じるなど)、勉強が分からない、学校の先生や友人との人間関係など様々な理由があり、不登校の要因は特定のきっかけにかたよらず、多岐にわたるという調査結果が報告されています。また、学校に行きづらくなる理由としては、上記の理由以外に生活リズムの乱れ、ネットやゲームなどの影響(一度始めると止められないなど)が小学生・中学生ともにそれぞれ全体の20%以上を占める結果となっています。
精神科医療の必要性について
不登校の子ども全員に受診が必要という訳ではありませんが、頭痛や腹痛といった身体症状、朝に具合が悪くてなかなか起きられないといった症状がある際には、身体の病気が隠れてないか、まずかかりつけの医療機関に相談することをお勧めします。当院では、身体の問題がないと明らかになり、何らかのストレス要因に反応して身体症状が生じている場合に、ストレス負荷を緩和するための環境調整やストレスへの対処法を一緒に考えていくことで、お力になることができます。
不登校のきっかけとして勉強が分からないことの割合は高く、再登校しづらくなる要因としても多くの割合を占めています。勉強についていけない理由として、発達障害(学習障害があり頑張っても理解できない、注意欠如多動症があり勉強に集中できないなど)の可能性が考えられる場合には、検査によりご本人の特性を明らかにした上で、ご本人の特性に合わせたサポートができるように環境を調整することが大事です。注意欠如多動症など一部の発達障害は、薬物療法により症状を緩和することもできます。
学校の人間関係が理由で学校に行きづらい背景に、発達障害があってコミュニケーションが上手くいかない場合もあります。また、年齢相応の対人スキルがある子どもであっても、他者からどう思われるかがとても気になってしまい、強い不安を感じて人との交流を避けるようになって、社会生活に支障をきたすこともあります。こういったケースで、社交不安症などの疾患があると考えられるときは、心理療法や薬物療法で症状を緩和することで、社会参加できるようお力になることができます。
当院でできること
当院では精神医学・心理学の理論を元にして、患者さん一人ひとりのお困りごとに合わせて解決策を一緒に考えさせていただきます。子ども達の中には、困ったことがあっても恥ずかしさなどから周りの大人に上手く助けを求めることができず、周りから見ても何が問題か分かりにくい場合や、そもそも本人自身が困っていることへの自覚がない場合も少なくありません。そういった場合には、なぜ検査を行うのか、ご本人に趣旨を理解してもらった上で心理検査を行うことで、何が生活しづらさに関与しているかの仮説を立て、本人の気持ちに配慮しながら問題解決の手助けをすることができます。お薬では解決できない困りごとも多いですが、中にはお薬を使うことで劇的に生活しやすくなる場合もあります。全ての問題を解決することができなくても、お薬を使うことで少し楽に生活できるようになる場合も少なくありません。
不登校の子どもやそのご家族に対しては、心理的な支援が重要になりますが、医師の診察の時間だけでは不十分と感じる方も少なくありません。希望される方にはカウンセリングという形で、当院の心理職が、診察とは別に時間を取って関わらせて頂くことができます。傾聴を大事にしてご本人を支援する方法(クライエント中心療法など)、ご自身の症状や考え方・どう行動するかに焦点を当てて問題解決に取り組んでいく方法(認知行動療法)、非言語での自己表現を促すことで問題解決に導く方法(箱庭療法やプレイセラピーなど)、家族の相互理解を深めることで問題解決に導く方法(家族療法)など様々なものがあります。それぞれのお困りごとやご希望に合わせて治療方法をご提案させて頂きます。
折角困っていることの原因が分かったとしても、学校などのご自宅以外の居場所でどうサポートしてもらったらいいか分からないことがあります。そういった場合、ご本人やご家族から了承いただければ、学校や地域の支援者の方からの相談に対し、当院がどのような治療方針で支援させて頂いているか情報共有し、どういったサポートが生活場面で必要か一緒に考えさせて頂くことができます。